激流のような誠愛を秘めた神主は新米巫女を離さない



 お昼前には荷物を運び終え、業者は撤収した。
「一緒に食事にしましょう。こちらへ」
 様子を見に来た千暁に言われ、紫緒は驚いた。

「母がはりきって用意しましたので、ぜひ」
 仕方なくついていくと、母屋へ案内された。
 玄関もまた和風の引き戸だったが、鍵は指紋認証だった。

 ふと顔をあげると防犯カメラもある。
 年月を重ねた重厚な玄関をくぐる。お邪魔します、の声は自然と小さくなっていた。
 出されたスリッパをぺたぺたと鳴らしながら歩き、着いたのは今風のダイニングだった。

「いらっしゃい!」
 中年女性の明るい声に迎えられた。彼女はにこにこと紫緒を見る。
 中央のテーブルにはすでに三人の人がいた。
 一人は壮年の男性で、神主の装束をつけている。紫緒より年上らしい美しい女性は巫女装束で、老齢の女性は髪こそ白髪だったが、背筋がピンと伸びて若々しく見えた。

 食卓には大小の皿が並び、おいしそうなおかずがてんこ盛りだった。
「こちらは母の朋代(ともよ)です。あちらが父の嘉則(よしのり)、隣が姉の彩陽(あさひ)、正面が祖母の美津子(みつこ)さん」

 千暁が順に紹介してくれた。
 嘉則はどことなく千暁に似ていて、穏やかな笑みを浮かべていた。彩陽は無表情で、美津子はにこにこしていた。

「陸里紫緒です。今日からお世話になります。よろしくお願いします!」
 紫緒は勢いよく頭を下げた。
 千暁が面接をして合格したことになっているから、宮司に会うのは初めてだった。
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