激流のような誠愛を秘めた神主は新米巫女を離さない
「私たちは神主と呼ばれていますが、正式名称ではありません。神職と言うようにお願いします」
「はい」

「神職では宮司が一番上の職階にあたります。次が権宮司、禰宜、権禰宜、出仕と続きます」
「宮司だから紫の袴なんですか?」

「職階以外にも級が六等級ありまして、当社の宮司は二級上(にきゅうじょう)なので紫に薄紫の紋が入った袴です。二級は紋のない紫、三級、四級は浅葱色、この袴です」
 千暁は自分の水色の袴を指さして言った。

「一級は紫に白の紋、特級は伊勢神宮の大宮司レベルで、白に白紋となります」
「級があるなんて初めて知りました」

「さらに階位があるんですよ。上から浄階、明階、正階、権正階、直階です。私と父は専門の大学を出ているので明階です」
「巫女にも階級があるんですか?」
 自分は松葉色で、ほかの人は緋色だった。

「巫女は神職ではないですし、階級はありませんよ」
「神職じゃないのはどうしてですか?」
「神事を執り行わないからです。女性でも資格を取得して神職になれます。この資格は神社本庁が定めるもので、神社本庁に所属していない神社はまた話が変わってきます」

「いろいろあるんですね」
 最初のほうに聞いた話はすでに頭から抜けていそうだった。

「古事記や日本書紀を読んだことはありますか?」
「あります……けど、まったく覚えてません」

「またお読みいただけますか? 理解が深まると思います」
 軽く考えていたわけではないが、想像以上に大変そうで、紫緒はこっそりため息をついた。
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