激流のような誠愛を秘めた神主は新米巫女を離さない
「俺だって、頑張って生きてるだけなんだ……」
「頑張り方を間違えませんよう。世の穢れに心を乱されることもおありでしょう。ですが、そのようなときこそ一度立ち止まり、心に問いかけてみてください」

「うるせー!」
 斗真は吐き捨てるように言い、千暁に背を向けた。そのまま早足で歩いて行く。 紫緒はほうっと息を吐いた。

「ありがとうございます」
「紗苗さんからの知らせで、つい走ってしまいました。これでは指導する資格がありませんね」
 千暁が苦笑し、紫緒は首を振った。
 紗苗への感謝で胸が熱くなり、恐怖の反動で涙が出そうになるのを必死でこらえる。

 どうか、と紫緒は心の中で願う。
 どうか、彼の言葉が鯖田さんに届きますように。

 顔をあげると千暁の穏やかな笑みがある。
 紫緒の心はそれだけで平らかに凪ぐようだった。
 同時に温かなさざ波が優しく波紋のように広がっていくのを感じていた。

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