激流のような誠愛を秘めた神主は新米巫女を離さない
「今でも思い出したようにネットで盛り上がって女性の参拝が増えますよね。祭りのあととか初詣のあととか」
 絵麻が続けて言った。
 千暁がそんなに人気があるとは知らなかった。
 だけど、納得だ。あんな清冽な男性はほかで見たことがない。存在自体が澄んで涼やかだ。

「巫女はなんで三十歳で引退なんですか?」
「必ずってわけじゃないんですよ。もっと若くても定年の神社とか、制限してない神社もあるようです。たいていは未婚が条件ですけど」
 絵麻はもう着替えを終えて髪を結い始めた。

 年齢の制限があるなんて思っていなかった。だが、確かに年配の巫女を見たことはなかった。自分は最長で四年ちょっとでやめなくてはならなくなる。

「ここを辞めたらみなさんどうされるんでしょう」
「いろいろよ。結婚する人もいるし」
 結婚と聞いて、紫緒の頭に昨夕のことがよぎる。

『私と彼女は結婚する予定でいますので』
 千暁はそう言った。斗真を退ける方便だとわかっているが、それでもやはり千暁を意識してしまう。

「紫緒さんはどうして巫女に?」
 紗苗に聞かれて、我に返った。

「失業したときに天社さんに誘われたんです」
「どの天社さん?」
「……千暁さん」
 名前で呼ぶのはなんだか照れてしまう。
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