激流のような誠愛を秘めた神主は新米巫女を離さない
「巫女にも変な人がからむことあるから気を付けてね。ただのコスプレみたいに思ってる人もいるし」
 いろいろと考えが甘かった、と紫緒は改めて反省した。



 朝の日供祭の間も朝礼の間も、数年で定年ということが頭に残った。
 どれだけ頑張っても結末が決まっている。そんなこと、千暁は言ってくれなかった。
 その後の再就職はどうしたらいいのだろう。
 そのころには結婚も今より真剣に考えなくてはいけないだろう。だが、そんな相手が見つかるのだろうか。

 いや、今まで縁がなかったのに見つかるとは思えない。斗真に憧れたりするあたり自分は男を見る目がない。しっかり働く道を選んだ方がいいだろう。

 転職活動はいつからしたらいいんだろう。
 まずはここで定年まで働いた方がいいだろうか。そのほうが勤め上げた実績として見てもらえるかもしれない。
 悩みは尽きない。

 朝礼を終えると、宮司からの研修を受けた。
 千暁は地鎮祭で外へ出るということだった。
 午前中でもすでに三十度を超える中、あの装束で祭儀を執り行うなんて、どんなに大変だろう。
 巫女装束の自分もすぐに汗だくになってしまう。

 午後はまた彩陽の研修を受ける。
 授与所は窓を閉め切ってクーラーを入れていた。それでも充分に暑かった。
 窓をこんこんと叩かれ、紫緒は顔を上げる。
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