激流のような誠愛を秘めた神主は新米巫女を離さない
 祈りって確かプレイで合ってるよね? 道具は、どうだっけ、思い出せない。使うって言葉でいいかな。
「イッツ、プレイ、ユーズ」

 それは祈りに使うものです。
 そう言ったつもりだが、彼らはまた首をかしげた。
 興をそがれたらしい子供が縄を降りたので、ほっとした。

「どうされましたか」
 ふいに声がした。
 声の方を見ると、水色の袴をはいた神主がこちらに向かっていた。三十歳くらいだろうか。背が高く、姿勢がいい。すっきりと整った顔に穏やかな優しい微笑を浮かべていた。黒髪は短くカットされていてさわやかだ。

 清流だ、と紫緒は思った。
 山奥の木々に囲まれた清らかな流れ。決して濁ることも穢れることなく流れ続ける。
 そんな清々しさが、彼にはあった。

「使い方がわからないみたいで、お子さんが縄を登ってたんです」
 神主は紫緒に頷き、英語で彼らに話しかけた。

 神主が流暢に英語を話すことに驚いた。違和感がすごかった。
 説明を受けた家族連れは大きく頷いた。

「I See」
 わかってくれたようで、彼らはお参りをして帰って行った。

「止めて下さり、ありがとうございます」
「こちらこそありがとうございます」
 神主に頭を下げられ、紫緒は慌てて頭を下げ返した。
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