激流のような誠愛を秘めた神主は新米巫女を離さない
「お風呂上りでしたか?」
「はい」
「どおりで、なんだか色っぽいと思いました」
 見つめられ、紫緒の顔がカーっと熱くなる。

「お邪魔してすみません、私は部屋に帰りますので」
 歩き出そうとしたとき、タオルがはらりと落ちた。慌ててつかもうとした紫緒はバランスを崩してしまい、窓の外に倒れそうになる。
「危ない!」
 千暁が素早く紫緒を支える。

 抱きしめられる体勢になり、紫緒の顔はさらに熱くなった。
 たくましい腕がしっかりと自分を支えてくれている。Tシャツ一枚だからダイレクトにその感触が伝わって来る。意外にがっちりした体格なのもわかって、さらに落ち着かなくなってしまう。
 真っ赤になった顔を見られたくなくて、紫緒はうつむく。

「あなたは本当にかわいい方ですね」
 千暁が耳元でささやき、吐息が耳にかかった。

 なぜだか声が甘くなまめかしく聞こえた。初めてのことだった。男性の色気なんて今までさっぱり感じたことなどない。
 穏やかで抑揚の少ない声なのに、自分にだけ向けられるとこんなにも胸を焦がすなんて。

 体を離そうとすると、さらにぎゅっと力を込めて抱きしめられた。
 紫緒は混乱した。
 こんなふうに抱きしめられていては、勘違いしてしまいそうだ。
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