激流のような誠愛を秘めた神主は新米巫女を離さない
「灯籠や狛犬に登って写真を撮る方もいらっしゃって困ってるんです。注意書きを立てるのは無粋ですが、そろそろ必要かもしれませんね」
「安全のためですもんね」
立札があると風情はなくなるなあ、と残念にはなる。
「さきほどからベンチに座って悩んでおいでの御様子でしたが、大丈夫ですか?」
神主に穏やかに聞かれて、紫緒は戸惑った。
「もう日が暮れる一方です。お声がけしようかと迷っておりました」
「すみません、遅くまでいると迷惑ですよね」
「そういうわけではございません。人気のない場所は女性には危険でございますので」
親切心が胸に痛い。帰らなくてはならない。
そうして、一人暮らしの寮で憂鬱な明日が来るのを待つことになる。
「よろしければお話しくださいませんか。話すだけでも気持ちが軽くなることはあります」
「ですが」
「赤の他人だからこそ話せることもあるかと思います。もちろん他言はしませんし、無理にとは申しません」
穏やかな笑みをたたえたまま、彼は言う。
その笑顔を見るだけで、波立った心が平らかになっていくようだ。
「実は……」
ベンチに並んで座り、紫緒は話し始めた。
「安全のためですもんね」
立札があると風情はなくなるなあ、と残念にはなる。
「さきほどからベンチに座って悩んでおいでの御様子でしたが、大丈夫ですか?」
神主に穏やかに聞かれて、紫緒は戸惑った。
「もう日が暮れる一方です。お声がけしようかと迷っておりました」
「すみません、遅くまでいると迷惑ですよね」
「そういうわけではございません。人気のない場所は女性には危険でございますので」
親切心が胸に痛い。帰らなくてはならない。
そうして、一人暮らしの寮で憂鬱な明日が来るのを待つことになる。
「よろしければお話しくださいませんか。話すだけでも気持ちが軽くなることはあります」
「ですが」
「赤の他人だからこそ話せることもあるかと思います。もちろん他言はしませんし、無理にとは申しません」
穏やかな笑みをたたえたまま、彼は言う。
その笑顔を見るだけで、波立った心が平らかになっていくようだ。
「実は……」
ベンチに並んで座り、紫緒は話し始めた。