激流のような誠愛を秘めた神主は新米巫女を離さない
「落ちましたよ」
 拾おうとした千暁の手が止まる。
 落ちたのは、紫緒のナイトブラだった。

 彼女は慌てて拾い、服の下に隠す。
「すみません!」
 紫緒は千暁の返事を待たずに脱衣所を出た。

 部屋に戻ると、へなへなと崩れ落ちる。
 目にはしっかり千暁の半裸が焼き付いていた。
 たくましい体は均整がとれていて無駄がない。古武術をやっているからだろうか。

「忘れたい」
 なのに、忘れようとすればするほど、彼の姿が蘇る。

「私のバカ、なんでノックしなかったの」
 さらにはナイトブラとはいえブラを見られてしまった。

 瞼にちらつく彼の姿を払いのけようとしながら、紫緒は両手で顔を覆った。
 気を紛らわせようとスマホをとると、ミカからメッセージが来ていた。

***

 シャワーを浴びながら、千暁はため息をついた。
 母の暴走を止められなかったが、便乗したずるい自分がいたことは否めない。

 最初からホテルでもネカフェでも友人の家でも行けばいいだけだ。
 一緒に過ごすことで紫緒が自分を気にしてくれれば、と思ってしまった。

 自分はずっと彼女を気にしている。彼女が自分を「天社千暁」として認識する前から。
 そうしてそれはいつしか恋に育ってしまっていた。
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