激流のような誠愛を秘めた神主は新米巫女を離さない
 彼女から悩みを聞き出した時、つい「彼氏役を」と言ってしまった。
 幼馴染に抱き着かれた彼女を見ると、嫉妬の奔流が渦巻いた。

「まったく」
 彼女の無防備さにはため息しか出ない。
 昨夜はノーブラで現れて、欲望の激流に理性が押し流されそうだった。

 これまで恋人などいなかったから、口説くことなど慣れていない。直球で結婚を口にして困惑させてしまった。

 うまく距離を近付けられない。
 彼ならもっとうまく口説くのか。
 金髪の青年を思い浮かべ、千暁はまたため息をついた。



 風呂から出た千暁は、スマホに紫緒からメッセージが来ていることに気がついた。
 彼女がこの家に来てから連絡が来るのは初めてだった。

『今度の休みに友達と遊びに行ってきてもいいですか?』
 千暁は顔をくもらせた。

 本来は千暁に聞かなくてもいいはずだ。恋人のふりをしてくれと頼んだから聞いて来たのだろうか。

 だが、問題はそこではない。
 友達とは、あの金髪の男なのか。

 胸に嫉妬の濁流が生まれ、千暁は自己嫌悪に陥る。こんなに心が狭いとは自分でも気が付かなかった。

『どうぞ楽しんできてください』
 返信し、スマホを置く。
 自分が彼女を誘える日はいつになるのか、予想もつかなかった。
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