激流のような誠愛を秘めた神主は新米巫女を離さない
「ミカはどうしてあのパーティーに?」
「あの会社は我が国から小麦を買ってるから。大きな取引ではないけど国としては今はどれも大事にしたいみたい。部下が行く予定だったけど体調を崩しちゃってね。僕が代理。運が良かった。どのみち君には会いに行く予定だったけど」

「引っ越してるから前のとこにはいないのに」
「調べてから行くに決まってるじゃん。それより本当のことを教えて」
 ごまかすのは許してもらえそうにない。

 紫緒は観念した。ミカならば神社に来ることもないだろう。
 詠羅が社長令嬢であることは伏せて、概要を話した。

 ミカは安堵の表情を浮かべた。
「つまり、君は今フリーなんだよね?」
「そんな確認しないでよ」
 いい年して彼氏もいないなんて恥ずかしくてたまらない。

「でもよくわかったね」
「恋人に特有の空気感がなかったから。あの男、偽装のために君に抱き着くなんて許せない」

「怒らないで。恩人なのよ」
「恩人ね」
 ミカは席を立つと、紫緒の隣に座り直した。
 え、と思ったときにはもう抱きしめられていた。

「ごめん。君がつらかったときにそばにいてあげられなかった。偽装の恋人なんて嫌だったでしょ?」
「だ、大丈夫だから、離して」
「やだ」
 ミカはなおさらぎゅうっと紫緒を抱きしめる。
< 69 / 241 >

この作品をシェア

pagetop