激流のような誠愛を秘めた神主は新米巫女を離さない
「もうお別れなんて寂し過ぎる」
 車を止め、運転席でミカはぼやく。カチカチと鳴るハザードが別れをせかしているかのようだった。

「また会えるよ。日本にいるんでしょ?」
「でも仕事が忙しくてさ。やっぱり結婚してほしい」
「また言ってる」
 紫緒は苦笑した。

 ミカもまた苦笑し、車を降りる。ぐるっと回って紫緒が座る助手席のドアを開けてくれた。

「どうぞ、お嬢様」
「ありがとう」
 ミカが差し出してくれた手を取り、車を降りる。

「お嬢様扱いって、なんだか嬉しい」
「これからいくらでもするよ」
 紫緒の手にキスを落とし、彼は言う。

「そういうのはダメ。日本なんだから!」
 紫緒が顔を赤くすると、ミカはまたふふっと笑った。
「異文化交流しようよ」
 ミカは紫緒をハグする。

「もう!」
「ほら、君も僕を抱きしめて。子供のころはよくやってたじゃん」
 期待に満ちた声で言われ、紫緒は仕方なくその背に腕を回す。

 子供のころは無邪気に近所のお兄ちゃんだと思って抱き着いていた。だけど、もう二人とも大人だ。
 彼の細かった体はたくましくなっていて、友達のハグなのにどきどきしてしまった。
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