激流のような誠愛を秘めた神主は新米巫女を離さない
「紫緒さん!」
 いるはずのない人の声がして、紫緒はびくっとした。
 振り向くと、そこには険しい顔の千暁がいた。

「心配で迎えに来てしまいました。お邪魔でしたら申し訳ありません」
「邪魔だよ」
 ミカが不機嫌に言い、紫緒をさらにきつく抱く。

「彼女を送っていただいてありがとうございます」
 紫緒は違和感を覚えた。千暁の声に穏やかさがないどころか、怒りすら含まれているように聞こえる。

 紫緒はもがいて、ミカはしぶしぶのように紫緒を離した。
「こんばんは、偽物の彼氏さん」
 ミカが挑発的に言う。
 紫緒はばつが悪くてうつむいた。

「バレてたから本当のことを話しました。ミカなら大丈夫かと」
「そうですか」
 不満そうな返事に、紫緒は身を縮める。
 こんな千暁は初めてで、紫緒はどうしたらいいのかわからない。

「紫緒、今度のレセプションパーティーに来てよ。大使館の中なんて見たことないでしょ」
「私なんて場違いだよ」

「紫緒は優しいから、断るなんて僕に恥をかかせることしないよね?」
「ずるい言い方するね」
 紫緒が苦笑すると、ミカは紫緒の肩を抱いた。

「君も来たい?」
 挑発的に千暁を見て言う。
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