激流のような誠愛を秘めた神主は新米巫女を離さない
「遠慮しておきます」
 千暁は笑みを浮かべたまま答える。
 二人の視線が絡み、それがまるで火花を散らしているようで、紫緒は戸惑う。

「彼女、僕のこと好きなんだよ。彼女と寝たんだ」
「は!?」
 千暁の口からとうてい彼らしくない声がもれた。ミカの発言以上に、紫緒はそのことに驚いた。

「子供のころのことです! 一緒にお昼寝しただけですから!」
 紫緒は慌てて言い繕う。

「あの頃から君はかわいかった」
 髪にキスをしてミカは言う。その目は千暁から離さない。
 千暁は無表情で彼を見返す。

「じゃあまたね」
 紫緒は慌ててミカから離れた。
「また必ず」
 ミカは紫緒に笑みを向け、挑発的に千暁を見てから車に乗りこみ、出発した。

***

 車が去ると、紫緒はすぐに千暁に頭を下げた。
「ご心配をおかけして、申し訳ありません」
 千暁はため息をつきそうになり、すんでのところで止めた。

「謝らないでください」
 いつまでたっても離れに明かりがつかないので、千暁はハラハラと紫緒の帰りを待っていた。
 いつ帰るのか、と、メッセージで聞いてしまった。
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