激流のような誠愛を秘めた神主は新米巫女を離さない
「律は今は世界中に演奏に行ってて、日本に帰ったときはうちにも泊まるの。千暁と仲がいいから」
 紫緒は二人が話をしている姿をまったく見たことがないから、仲がいいと言われてもピンとこない。

「雅楽をやる人って神楽の勉強もするから、昔は千暁と一緒に舞っていたのよ。それはそれはもうかわいくて」
 うっとりと語る彩陽は、紫緒の視線に気付いてはっと顔をひきしめる。

「うちの神楽の雅楽はいつも阿辺野家に頼んでて、家族ぐるみのお付き合いなのよ。粗相のないようにね」
「はい」
 紫緒は緊張して答えた。

 彩陽はワンピースに合う靴も用意してくれていて、紫緒はそれを履いた。
 彩陽は満足そうに家を出ていった。



 律の家は鉄道で一駅だった。
 電車に乗った紫緒は雅楽を検索した。

 雅楽には千二百年以上の歴史がある。日本の古典音楽であり、奈良・平安時代に唐、百済、新羅、高句麗から伝わった音楽や舞、平安時代に作られたものも含まれる。

 大別すると日本古来のものである国振歌舞(くにぶりのうたまい)、大陸から伝わった楽舞(がくぶ)歌物(うたいもの)の三つにわけられる。

 演奏の面で見ると、管弦、舞楽、歌謡の三つにわけられる。
 管弦は雅楽器で演奏するもので、舞楽は字のごとく音楽とともに舞う。歌がつくこともある。歌謡は雅楽器を伴奏に歌うものだ。

 さらに詳しい説明があったが、頭がパンクしそうで読むのをやめた。
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