激流のような誠愛を秘めた神主は新米巫女を離さない
 駅を降り、スマホのナビを頼りに行く。
 阿辺野家もまた豪華な和風建築だった。
 立派な門に、どこまでも続く塀。塀にまで屋根がある、と感心してしまった。

 門の入口のインターホンで、彩陽から律に届け物だと告げる。しばらくして本人が現れた。
 律は今日もぼさっとした頭をしていて、茶色の着物にグレーの袴をはいていた。

「……誰だっけ」
「陸里紫緒です。高天神社の巫女です。これを届けにきました」
 律は黙って封筒を受け取った。すぐに開けて中身を確認する。

「……中、入って」
 律が言い、身を翻す。
 紫緒はおずおずと続いた。
 リビングのに案内されると、ここで待ってて、と律が去った。
 紫緒は困惑しながらソファに腰掛ける。

 リビングは明治時代の洋館のようだった。
 板張りの床にカーペットが敷かれ、高さのあるソファとテーブルがある。
 壁には油絵の風景画が飾られて、棚の上には花が飾られている。窓は上部が丸みを帯びておしゃれだった。

「あ? お前誰だ?」
 誰何の声に振り向くと、入口に袴姿の中年男性がいた。
 紫緒は立ち上がってお辞儀した。

「お邪魔しております。高天神社からお使いできました」
「使いっぱしりか。なんでこの部屋にいるんだよ雑魚」
 バカにした言い方に、紫緒はむっとした。
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