激流のような誠愛を秘めた神主は新米巫女を離さない



 紫緒はスマホで検索し、近くに薬膳が有名な店があるのを見つけた。
 二人で歩いてそこまで行き、店員にお腹に優しいものを尋ね、おすすめされた中国粥を注文する。
 食べ終えた律は、お腹を撫でて大きく息をついた。

「久しぶりにお腹いっぱいに食べた」
「小食なんですね」
「千暁は食欲ないのはストレスじゃないかって。わからないけど」
 伝統芸能の家に生まれ、世界で活躍しているならばいろいろと大変だろう、と紫緒は同情する。

「元気出てきた。お礼はドライブでもいい?」
「お気遣いなく」
「彩陽にも頼まれてるから」

 そうだ、先ほどもそう言っていた。
 普段はきつい彩陽が自分を気づかってくれたことが意外であり、嬉しくもあった。
「じゃあ、ちょっとだけ」
 紫緒が答えると、律は嬉しそうに目を細めた。



 一緒に彼の自宅に戻ると、彼は紫緒を車に乗せた。左ハンドルの車だった。
 三つ又の槍のマークに、高そうな車だ、と紫緒は緊張するが、彼は平気そうに運転席に乗る。

 高速に乗って南下し、伊豆半島へ向かった。高速を降りたら海沿いの国道をひた走る。
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