激流のような誠愛を秘めた神主は新米巫女を離さない
「俺、ドライブが好きなんだ。海沿いを走ると気持ちいい」
「そうですね」
 海を見ながら紫緒は答えた。

 左ハンドルの運転席だから、海を見ようと思うと彼がどうしても視界に入る。
 視線に気づいた律は、恥ずかしそうに顔を赤らめた。

「見ないで」
「すみません」
 紫緒は慌てて前を向いた。

「天社さんとは幼馴染なんですか?」
「そうだよ。彩陽はちょっとおっかないけど、いい人だよ。千暁は昔から優しくて、清らかな感じがする。山奥の清流のようで」

「私もそう思いました!」
 紫緒の同意に律の口元がほころび、すぐに消えた。

「でも清らか過ぎて疲れるんじゃないかなって思うときがある。本当に気晴らしが必要なのは彼なのかも」
「そうかもしれませんね」
 人知れず、彼もストレスに苛まされているのだろうか。

 律は海沿いの道の駅に車を入れる。
 車を降りると、彼は言った。
「ここ、好きなんだ」
「道の駅って人気ですよね」

 海風が髪を軽く撫でて過ぎ去る。
 日差しは暑いが、明るい空が気持ちいい。

「アイスが売ってますよ!」
 紫緒の声が思わずはずんだ。
< 84 / 241 >

この作品をシェア

pagetop