激流のような誠愛を秘めた神主は新米巫女を離さない

***

 みなが寝静まった夜、千暁は一人、外の水場に出た。
 白い着物に白い袴を着ている。

 地下水をくみ上げる手押しポンプを動かし、桶に水を汲むと、そのままざばっと浴びた。

 再び水を汲み、また浴びる。
 そんなことをしても、心はまったく鎮まらなくて、また水を汲んだ。

 律に抱えられた紫緒を見たときには、愕然としてしまった。
 彼とは幼いころからのつきあいで、親友だ。

 どうして律が。
 裏切られたような気持にすらなったが、すぐにそんなわけがないと思い直す。
 律は知らないのだ。自分の想いを。

 紫緒を抱える律の顔がいつになく和らいでいることに、不安になった。
 とっさに、つきあっていると言ってしまった。

 律の顔に落胆が浮かび、自らの失敗を悟った。
 もうすでに、彼は……。
 親友なのに。

 なのに、嫉妬心から、自分の気持ちを優先してしまった。
 そんな自分が許せない。
 だが、彼女だけは譲れない。

 葛藤に、心が乱れる。
 千暁はまた水を自分に浴びせる。
 どれだけ浴びても心の穢れは流せそうになくて、千暁は水行を続けた。
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