激流のような誠愛を秘めた神主は新米巫女を離さない
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みなが寝静まった夜、千暁は一人、外の水場に出た。
白い着物に白い袴を着ている。
地下水をくみ上げる手押しポンプを動かし、桶に水を汲むと、そのままざばっと浴びた。
再び水を汲み、また浴びる。
そんなことをしても、心はまったく鎮まらなくて、また水を汲んだ。
律に抱えられた紫緒を見たときには、愕然としてしまった。
彼とは幼いころからのつきあいで、親友だ。
どうして律が。
裏切られたような気持にすらなったが、すぐにそんなわけがないと思い直す。
律は知らないのだ。自分の想いを。
紫緒を抱える律の顔がいつになく和らいでいることに、不安になった。
とっさに、つきあっていると言ってしまった。
律の顔に落胆が浮かび、自らの失敗を悟った。
もうすでに、彼は……。
親友なのに。
なのに、嫉妬心から、自分の気持ちを優先してしまった。
そんな自分が許せない。
だが、彼女だけは譲れない。
葛藤に、心が乱れる。
千暁はまた水を自分に浴びせる。
どれだけ浴びても心の穢れは流せそうになくて、千暁は水行を続けた。