激流のような誠愛を秘めた神主は新米巫女を離さない
 翌日、紫緒は神社の更衣室で彩陽を見るなり頭を下げた。
「昨日はありがとうございました!」
 彩陽は面食らって一歩あとじさる。

「なによ」
「彩陽さんのおかげで楽しく過ごせました」
「そ、それより今日から巫女舞を教えるから、しっかり覚えてよね」
 彩陽の口調はいつも通りにきつい。

「はい! ワンピースはクリーニングしてお返しします!」
 紫緒はえへへと笑う。
 彩陽は苦虫をかみつぶしたような顔をしていた。

***

 彩陽はいらいらと仕事をこなした。
 紫緒は楽しかったと言った。
 ならば、計画はうまくいったはずだった。
 律と紫緒を一緒に出掛けるように仕向ける。

 律はイケメンだ。楽師という珍しい職業の子ということもあって、子供の頃から女子に人気だった。それが嫌で顔を隠し、身だしなみは最低限になってしまった。

 千暁以上に穏やかで優しい子だ。
 わかっていて、律に紫緒を連れ出すように頼んだ。

 彼の本当の姿を見れば、その優しさもあいまって紫緒が惚れこむはずだった。
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