終始不 -シュウシフ-
「……ふふ。ごめんなんか急に。聞いてくれてありがとう。それだけ。伝えれて良かった」
「いや、全然。マジで……ありがとう」
少し涙目に見えたのは私の単なる見間違い?
そんな古野にあともうひとつ。
分かりきっている可能性だけど、最後の私からのお願いを聞いて欲しい。
「……もし、今の気持ち聞いてもまた会ってくれるんやったら連絡ください。友達として、やったら、もう会わない」
「………わかった」
物理的とは違う。
今古野の瞳には、ちゃんと私が映っている。
もうそれだけで充分だと思った。
今度こそ私は、車のドアハンドルへと手をかける。
「───坂下」
「なに?」
「……ありがとう。またな」
大好きだった笑顔で古野が笑う。
私は「うん」と笑って頷き、バタン、と車の扉を閉めた。
それからもう二度と、古野から連絡が来ることは無かった。