終始不 -シュウシフ-

ふは、と吹き出すように笑われた。


古野は、なんにも変わっていなかった。

なんにも変わっていなさすぎて、涙が出そうになった。

声、喋り方、笑い方、仕草、笑顔。

全体的にごつっとして少し筋肉質になっているところは大人の男の人になったのだと、月日が遥かに流れたことを実感させられたけれど、それ以外は10年前の古野だった。


大好きだった古野のままで困る。




「いらっしゃいませ」



連れてきてもらったのは、車で20分ほど走らせた場所にあったハンバーグ屋さん。

店員さんに案内されて、席に着く。



「俺これにする。いつもこれ。ガチ美味い」



弾んだ声でお決まりのメニューを指差しで教えてくれる。

どれにしようかとじっくりメニュー表に目を通すけれど、結局古野絶賛の明太子マヨネーズハンバーグを2つ注文した。



「ん、めっちゃ美味しい」

「美味しいやろ〜俺のオキニ、ここ」



古野のお気に入りのお店を教えてもらって、ちょっと頬がだらしなく緩みそうになる。

いけないいけない。
< 7 / 22 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop