わたくしが社交界を騒がす『毒女』です~旦那様、この結婚は離婚約だったはずですが?
「断れるわけないじゃないですか。しかも相手が、よりによってベネノ侯爵令嬢とは……」
ネイサンが熱くなれば熱くなるたびに、ユージーンは冷静になれる。
「彼女を知っているのか?」
「知っているも何も……。彼女は、社交界の毒女として有名ですよ?」
有名と言われても、社交の場からめっきりと遠くなったユージーンにしてみれば、初耳である。
――断れない縁談。
――その相手が社交界の毒女。
となれば、この縁談に何かしらの意図を感じる。
「この毒女……ではなく、クラリス嬢ですが。アルバート王太子殿下の腰巾着としても有名でしたからね」
アルバートの名が出たところで、ユージーンは無意識に口の端をひくっと動かした。
「アルバートの腰巾着、だと?」
「ええ、これも有名な話ですよ。社交の場では必ずアルバート王太子殿下の側に張り付いていて、殿下が料理を褒めて口にしようとすると、脇からそれを奪い取るって。まぁ、僕もそんな話は噂だと思っていたんですけどね」
今どき、そのような下品な令嬢がいるのだろうか。アルバートとクラリスの仲をよく思っていない者が流した中傷ではないのだろうか。
ネイサンが熱くなれば熱くなるたびに、ユージーンは冷静になれる。
「彼女を知っているのか?」
「知っているも何も……。彼女は、社交界の毒女として有名ですよ?」
有名と言われても、社交の場からめっきりと遠くなったユージーンにしてみれば、初耳である。
――断れない縁談。
――その相手が社交界の毒女。
となれば、この縁談に何かしらの意図を感じる。
「この毒女……ではなく、クラリス嬢ですが。アルバート王太子殿下の腰巾着としても有名でしたからね」
アルバートの名が出たところで、ユージーンは無意識に口の端をひくっと動かした。
「アルバートの腰巾着、だと?」
「ええ、これも有名な話ですよ。社交の場では必ずアルバート王太子殿下の側に張り付いていて、殿下が料理を褒めて口にしようとすると、脇からそれを奪い取るって。まぁ、僕もそんな話は噂だと思っていたんですけどね」
今どき、そのような下品な令嬢がいるのだろうか。アルバートとクラリスの仲をよく思っていない者が流した中傷ではないのだろうか。