わたくしが社交界を騒がす『毒女』です~旦那様、この結婚は離婚約だったはずですが?
 クラリスの両親は、王城で出会った。
 近衛騎士と毒師。二人とも王族に仕えていたため、自然と顔を合わせる機会も多かった。そうやって何度か仕事で一緒になるたびに、互いに惹かれるようになる。そして出会ってから二年後、二人は結婚した。
 そこから二年後にクラリスが生まれ、さらに四年後に弟のデリックが生まれる。
 クラリスが三歳になったころ、ありとあらゆる毒を摂取してもまったく効果がない、ということに母親は気がついた。というのも、クラリスは毒師である母親が採取していた毒を、誤って口にしてしまったのだ。周囲の者は慌てて解毒薬を準備しようとしていたが、その間、クラリスはけろっとしていたとのこと。
 念のため、母親は解毒薬を飲ませたが、顔色一つ変えなかったクラリスを不思議に思い、血液を採取して検査した。すると、ありとあらゆる毒に、なんの反応も示さなかった。
 いくら毒に身体を慣らしている毒師といえども、少なからず毒の影響は受ける。そして母親は、クラリスを毒師にするつもりはなかったため、毒の訓練をさせていない。
 となれば毒への耐性は生まれながらに持ったものとなる。毒師からしてみれば理想的な体質であるし、毒慣らしの訓練も不要。
 それでも母親は、クラリスを毒師にするつもりはなかった。
 しかし、転機が訪れたのは十歳になったときだろう。急激にクラリスの体調が悪化した。
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