わたくしが社交界を騒がす『毒女』です~旦那様、この結婚は離婚約だったはずですが?
 ふむ、とユージーンは頷く。
「あの、旦那様。旦那様もこの結婚には乗り気でなかったのですよね。そのため、離婚前提での結婚を提案されたわけですよね?」
「そうだな」
 彼の頷き方が、少しだけ上の空に見えた。それでもクラリスはたたみかける。
「ですから、このまま白い結婚を続け、子が授からなければ、わたくしたちの離婚が認められるわけです」
 それが離婚前提の結婚、離婚約の条件である。
「君は、俺と離婚したらどうするつもりなんだ?」
「王都へと戻り、アルバート殿下、そしてハリエッタ様の毒見役をふたたびお願いする予定です。今は、弟のデリックがその役を務めておりますが」
 クラリスは目を伏せ、彼らへと思いを馳せた。
 けしてここでの生活に不満があるわけではない。だって、毒だけは豊富なのだ。
 しかしアルバートもハリエッタもデリックも心配だった。クラリスが毒見役をおりたことで、彼らがその毒に侵されるのではないかと。
「アルバートが俺と君の結婚をすすめた理由だが、なんとなくわかったような気がする」
 ユージーンの低くて静かな声に、クラリスは顔をあげた。
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