わたくしが社交界を騒がす『毒女』です~旦那様、この結婚は離婚約だったはずですが?
「先日、アルバート王太子殿下の婚約披露パーティーがありましたよね? ユージーン様は欠席されましたが」
 もちろん、ユージーンにも招待状は届いていた。アルバートとは昔から犬猿の仲であり竹馬の友のような関係であるため、出席しようとしていた。
 しかしそれが叶わなかったのは、ここから南にある街に魔獣が紛れ込んだという知らせを受けたからだ。
 ユージーンは辺境周辺を始め、国やら民を魔獣から守る魔獣討伐団を率いており、その団長でもある。魔獣討伐団は騎士団とは独立した組織であるが、討伐団だけで対応が不可と判断された場合は、騎士団へ応援を頼むこともあるという関係だ。その逆もまた然り。
 ただ基本的には魔獣討伐には魔獣討伐団が派遣される。
 騎士団が人から人を守るのであれば、魔獣討伐団は魔獣から人を守る。そのため、魔獣に襲われた人や街があれば、すぐさま向かわなければならない。
 だからユージーンは、アルバートの婚約披露パーティーの出席を急遽断り、魔獣討伐へと向かった。
 代わりにネイサンへパーティーへの出席を頼み、適当な贈り物を用意するようにと伝えていた。
「その婚約披露パーティーで、あの毒女……ではなく、クラリス嬢がやらかしたのですよ」
 ネイサンは憤っているのか楽しんでいるのかよくわからないような微妙な笑みを浮かべている。
「殿下が婚約者の方とダンスを終えたとき、毒女が婚約者に飲み物をぶちまけたのです」
 とうとうネイサンは、毒女をクラリス嬢と言い直すのをやめた。
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