わたくしが社交界を騒がす『毒女』です~旦那様、この結婚は離婚約だったはずですが?
 ユージーンがクラリスの身体を抱き起こす。
「だがな。君は俺の妻だ。それを忘れないでほしい」
「は、はい。期間限定の妻、ですよね? この結婚は離婚約ですよね?」
「なるほど……」
 まるで口づけの名残を味わうかのように、彼はペロリと唇を舐めた。
 その仕草を目にして、ざわっとクラリスの肌は粟立った。
「一生俺の妻でいてもらえるよう、俺も努力しよう。では、おやすみ」
 チュっとクラリスの額に唇を落としたユージーンは、内扉を開けて自身の部屋へと戻っていく。
 高まった身体の熱をやり過ごしながら、クラリスは寝台へと潜り込んだ。

 次の日、目覚めてメイを呼ぶ。昨夜となんらかわりないクラリスの様子をみて、メイは少しだけ顔をしかめたものの、何事もなかったかのように朝の支度を整える。
 クラリスは、朝食の前に温室にまで足を向けるのを日課としている。それもあって、普段は紺色のエプロンワンピースを身につけていた。調薬やら毒草の摘み取り、はたまた生き物の毒抜きをするときの作業のときにも着ている。
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