わたくしが社交界を騒がす『毒女』です~旦那様、この結婚は離婚約だったはずですが?
「そうだったのですね」
 クラリスのすがすがしいほどの笑顔に、二人の関係を勘違いしていたメイは恥ずかしくなった。
「まあ、わたくしも周囲にそう思わせて、わたくし自身の結婚の話題を遠ざけようという意思があったことは認めます」
「クラリス様はご結婚なさるつもりはなかったのですか?」
 メイにとってクラリスに結婚の意思がなかったという話は寝耳に水であった。
「ええ、そうね。あなたもわたくしの体質は知っているでしょう?」
「そうでうけれど。それと結婚、関係ありますか?」
「世の中、メイのような人間ばかりではないってことよ」
 そんな意味深な言葉を口にしたクラリスであるが、今はすでに結婚している。しかも新婚ほやほやで、夫は不在という別居婚である。
 さらにその結婚は離婚前提の約束であったため、受け入れたとのこと。
 離婚前提の結婚でかつ別居婚という、新婚とはいえないような環境であっても、クラリスは不平不満を口にしない。
 メイとしてはクラリスの幸せを望みたいだけだから、クラリスにとって満ち足りた生活を送れているのならば、メイ自身も不満はない。
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