わたくしが社交界を騒がす『毒女』です~旦那様、この結婚は離婚約だったはずですが?
 それでもさわりと葉がこすれる音がすると、カロンは腰にたずさえている剣に手をかける。ピンと空気が張り詰める。
 そんななか、クラリスの明るい声が響く。
「あ。ここは、きのこの生息地ね」
 見るからに派手な色合いのきのこ。この手のきのこに毒があることをメイだって知っている。
「ねえ、カロン。ここのきのこは採っても大丈夫かしら?」
「あ、はい。森にあるものは好きに採取していいと、ネイサン様がおっしゃっていました」
 そう答えるカロンの顔は、どこか強張っている。
「ありがとう。では、きのこを採らせていただきますね」
 クラリスはきのこが豊富に生えている場所にしゃがみこんで、せっせとそれを摘み始める。
 その間、カロンは不審なものが近くにいないか、眼光を鋭くして見張っていた。
「奥様、私も手伝いましょうか?」
 メイが声をかけると、「お願い」と返事があった。
「このきのこで、できるだけ傘が大きなものを選んで採ってくれるかしら?」
「はい」
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