わたくしが社交界を騒がす『毒女』です~旦那様、この結婚は離婚約だったはずですが?
 しばらく二人できのこを採っていた。
「……そろそろお時間が」
 カロンが遠慮がちに声をかけてくる。
「暗くなると、危険ですから」
「もうそんな時間?」
 驚いた様子のクラリスは、ひときわ甲高い声をあげた。
「はい。ネイサン様からは、二時間以内に戻ってくるように言われております。日が落ちると、この辺りは一気に暗くなります」
 重なり合った葉の向こう側から、太陽光が降り注いでいるが、その明かりがだんだんと弱々しくなっているようにも感じる。
「そうなのね。まだ摘み取り足りないけれど、この森で迷っても皆に迷惑をかけてしまうわね。また、明日来ればいいもの」
 メイも手伝ったおかげか、バスケットには山盛りの毒きのこが入っている。
「明日もですか?」
 驚いたようにカロンが声をあげた。
「え、えぇ。そのつもりだけれど。何か?」
「い、いえ……なんでもありません」
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