わたくしが社交界を騒がす『毒女』です~旦那様、この結婚は離婚約だったはずですが?
 身体の大きなカロンが、少しだけ肩を震わせていた。メイも不思議には思ったものの、それ以上、追求しようとは思わなかった。
 それから森の散策へは毎日行くことになった。薄暗い森の中は、風が吹くと光の通り道がかわって、少しだけ明るくなるときもある。耳を澄ませば、鳥の鳴き声も聞こえるし、何かのうなり声も聞こえる。
 そのたびにカロンは剣に手をかけ、周囲に気を配る。カロンの周りだけ、空気が張り詰めていた。
 それを知ってか知らずか、クラリスは珍しい毒直物を見つけると摘み取り、毒をもつ虫がいても捕まえる。まるで新しい遊び場を知った子どものように、彼女は生き生きとしていた。
 だからメイもこの散策はまんざらでもなかったのだが、すぐに回数制限がかけられるようになってしまった。
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