わたくしが社交界を騒がす『毒女』です~旦那様、この結婚は離婚約だったはずですが?
 それは、クラリスがウォルター領に来た日に出会った毒蛇のこと。
「君の考えは面白いな」
 ユージーンは、やはり笑っていた。
「君の必要なものは、採取できたか?」
「そうですね。毒植物の成長具合も確認できましたし、今日は毒蜘蛛(この子)も捕まえられたので、有意義な時間でした」
「君にそう言ってもらえて嬉しいよ。では、戻ろうか」
「欲を言えば、もっと奥まで進んでみたいのですが」
 クラリスは少しだけもじもじと恥ずかしそうに身体をくねらせながら、上目遣いで尋ねた。
「うん。それはダメだ。これ以上は危険だし、日の高いうちに森から出たいからね」
「旦那様のケチ」
「なんと言われようと、ダメなものはダメ。そういう顔をしてもダメ」
 それでもクラリスはじぃっとユージーンを見つめる。
 ユージーンはすかさずクラリスに顔を寄せ、唇を合わせた。
「……んっ」
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