わたくしが社交界を騒がす『毒女』です~旦那様、この結婚は離婚約だったはずですが?
思ってもいなかった行為に、クラリスは一歩退いた。すると逃がさないとばかりに、ユージーンが腰に手をまわしてくる。
ぽとっと、手にしていた毒蜘蛛入りの瓶が地面に落ちた。蓋が開いて逃げたら大変だと思い、慌てて視線だけ瓶に向ける。
そんなクラリスの行為もお見通しだったのだろう。すぐに両手で頬を包んできて、よそ見をさせまいとする。
「んっ、……ふぅ……っ」
苦しさから逃れるために息をしようとすれば、鼻から抜けるような甘い声が漏れる。身体の奥が火照りだし、足の力が抜けそうになったところで、やっと彼の唇から解放された。
ごしごしと袖で唇を拭き、落ちた毒蜘蛛を拾って大事に抱える。
「な、何をなさるんですか!」
「何って口づけだろう? 夫が妻に口づけて何が悪い?」
「こんな場所で不謹慎です。誰かに見られたらどうするのですか」
「何も問題ないだろう? それに、森には入らないようにと、みなには厳しく言っているからな。ここには俺と君しかいない」
「いるじゃないですか。ここに、この子が」
クラリスは瓶を掲げて、ユージーンに毒蜘蛛を見せつけた。
するとユージーンは顔を背けて、くくっと笑い出す。手を伸ばし、クラリスの頭をなでながら「悪かった」と言う。
ぽとっと、手にしていた毒蜘蛛入りの瓶が地面に落ちた。蓋が開いて逃げたら大変だと思い、慌てて視線だけ瓶に向ける。
そんなクラリスの行為もお見通しだったのだろう。すぐに両手で頬を包んできて、よそ見をさせまいとする。
「んっ、……ふぅ……っ」
苦しさから逃れるために息をしようとすれば、鼻から抜けるような甘い声が漏れる。身体の奥が火照りだし、足の力が抜けそうになったところで、やっと彼の唇から解放された。
ごしごしと袖で唇を拭き、落ちた毒蜘蛛を拾って大事に抱える。
「な、何をなさるんですか!」
「何って口づけだろう? 夫が妻に口づけて何が悪い?」
「こんな場所で不謹慎です。誰かに見られたらどうするのですか」
「何も問題ないだろう? それに、森には入らないようにと、みなには厳しく言っているからな。ここには俺と君しかいない」
「いるじゃないですか。ここに、この子が」
クラリスは瓶を掲げて、ユージーンに毒蜘蛛を見せつけた。
するとユージーンは顔を背けて、くくっと笑い出す。手を伸ばし、クラリスの頭をなでながら「悪かった」と言う。