わたくしが社交界を騒がす『毒女』です~旦那様、この結婚は離婚約だったはずですが?
 ネイサンも、ユージーンが言わんとしていることにピンときたらしい。
「つまり、ユージーン様はクラリス嬢を辺境伯夫人として一度は迎えるが、何年かしたらヤリ捨てると?」
 なぜかネイサンは一部、湾曲して理解している。
「ヤらない、捨てない。円満離婚だ」
「なるほど……とにかく結婚という関係さえ作ってしまえばいいと、そういうことですね?」
「そうだ。だからクラリス嬢には他に恋人を作ってもらってもかまわないし、俺との離婚後はその男と一緒になってもらってもかまわない。ただ、離婚が認められるための二年間だけ、少しだけ我慢してもらう必要はあるが」
 結婚後、二年経っても子に恵まれなかった場合、この国では離婚が認められている。それは、世継ぎといった意識が根強く残っているからだろう。
 だからその二年の間だけはしっかりと避妊をしてもらいたい。それが、ユージーンがクラリスに望むこと。
「つまり、離婚約っていう関係ですね」
「なんだ、それは」
「結婚の約束が婚約ですよね。だから離婚の約束だから離婚約。離婚前提の結婚を、離婚約と呼んでいるところがあると、何かの本で読んだことがあります」
 ネイサンはこういった知識は豊富である。
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