わたくしが社交界を騒がす『毒女』です~旦那様、この結婚は離婚約だったはずですが?
 パーティー当日――
 ユージーンは軍服に着替えていた。胸元にはウォルター家の紋章。これは、魔獣討伐団に所属する者たちが、その立場を示すためにつけているものらしい。だから軍服姿で胸元にウォルター家の紋章がある者は、魔獣討伐団の人間であると、一目でわかるのだとか。
 クラリスはシトラス色のドレスに身を包む。これもここに来てから贈られたものなのだが、日々、毒と戯れていたため、ユージーンが不在の間はドレスを着ていない。
 今日はコルセットとまではいかないが、体型を補正する下着を着せられた。その上にドレスを着たわけだが、胸元は広がりすぎておらず、とても上品なデザインになっている。袖にはレースによって小ぶりの花が補色で刺繍され、控えめなデザインであるものの遠目からは映える。スカート部分には同系色のグラデーションでレースが幾重にも重ねられていて、動くたびに光の具合で色味が変化する。派手ではないのに、華やかさがあった。
 空色の髪も、いつもは高い位置で一本に結んでいるだけであるが、今日はすっきりとアップにされた。
「準備は終わったのか?」
 いつの間にか部屋の入り口にユージーンが立っていた。黒い髪を後ろになでつけている。
「あ、はい」
 クラリスはなぜか羞恥に包まれた。このような姿を見せるのも恥ずかしいし、そういった姿のユージーンを目にするのも照れる。
「俺の妻は慎ましいようだ」
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