わたくしが社交界を騒がす『毒女』です~旦那様、この結婚は離婚約だったはずですが?
 いきなりそのように声をかけられ、クラリスの頬は熱くなる。熱を孕んだまま、彼を見上げた。
「では、行こうか。みな、待っている」
 ユージーンが腕をとるように言ってきたため、クラリスはそこに自身の腕を絡めた。
 手をつないで歩いたことはあるけれど、このように腕を組んで歩くのは初めてだ。彼との関係が新しいものに変わったような気がして、落ち着かない。
 大広間に足を踏み入れた途端、わっと歓声があがった。
 この雰囲気は、クラリスが知っているパーティーとは異なる。
 その場にいるのは大人だけではない。かわいらしいワンピース姿の女の子、ジャケットを羽織って恥ずかしそうにしている男の子。老若男女問わず、さまざまな人たちが集まっていた。
「ウォルター領に住んでいる者たちが参加している」
 だから彼は、王城で開かれるようなパーティーとは異なると言っていたのだ。料理も凝っているが、誰もが食べやすいようにテーブルに並べられていて、立食形式になっている。大広間の大きな窓も開放され、庭園への行き来が自由にできるため、外で食事をとることもできる。
 今日は、皆、朝からバタバタと動いていた。夜に行われるパーティーではなく、日の高いうちに開催することで、子どもたちも参加できるようにと。
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