わたくしが社交界を騒がす『毒女』です~旦那様、この結婚は離婚約だったはずですが?
「まあ、ユージーン様がいくら離婚前提であったとしても、毒女を夫人として認めるというのであれば、僕からは何も言いませんがね。ただ、ウォルター伯としての評判が下がるようなことだけは避けてもらいたいですね。醜聞とかね」
「そのためにも、事前に手紙を送り、こちらの意図を説明しておく必要があると判断した」
「なるほど」
 ネイサンは、左手の手のひらを右手で作った拳でポンと叩いた。
「ユージーン様はご自分でそこまで考えていらしたのですね。僕の意見なんていらないじゃないですか」
 それでも誰かに聞いてもらいたかったのだ。一人で抱え込みたくない内容だった。
 国王からの手紙は、返事は一か月以内にと書いてあったが、その返事に断りは含まれないのだろう。ただ、時間をかけて受け入れろと、そういう意図を感じとった。
 となれば、その一か月の間に少しでもクラリスという女性を知ったほうがいい。毒女、腰巾着と社交の場では言われているようだが、いったいどのような女性なのか。いろんな意味で彼女が気になった。

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