わたくしが社交界を騒がす『毒女』です~旦那様、この結婚は離婚約だったはずですが?
 クラリスがそう説明するのも三度目だ
「その話はあとで聞く」
 やはりユージーンの言葉からは棘を感じた。
 あらかた挨拶を済ませたところで、静かに音楽が流れ始めた。
「余興だ」
 聞こえてきた音楽は、クラリスが知っているものとは異なり、どこか陽気で明るい曲。ワルツのような曲調とも少し違う。
 するとジャコブが女性の手を取って踊り始める。その踊りも、クラリスの知らないものである。幼い子どもたちも、くるくると回り始める。
「クラリスも踊ってみるか?」
「え? ですがわたくし、この曲を知りません。ですから、踊れません」
「言っただろう? 王城でのパーティーとは違うって。みんな、好き勝手踊っているだけだ。君が踊りやすいように身体を動かせばいい」
 そうはいっても、クラリスが知っているといえばワルツのステップになる。仕方なく、知っているステップを踏み始めると、ユージーンもそれに合わせて身体を動かす。
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