わたくしが社交界を騒がす『毒女』です~旦那様、この結婚は離婚約だったはずですが?
「それは?」
「毒です。わたくしは常に毒を持ち歩いております。こちらに移動するときも、こちらの毒でなんとかしのいできました」
「なるほど。だったら、俺にもその毒を持たせてほしい」
「え?」
「誰かを暗殺するためじゃないぞ? 君の身に何かが起こったとき、俺も毒をもっていたほうがいいだろう? ちなみに、君が毒をとらなければどうなる?」
「恐らく、意識を失ってそのまま死ぬかと思います。わたくしを死に追いやりたいのであれば、毒を与えないことです。これが一番、自然に殺せる方法かと」
 ユージーンが腕を組み深く頷く。
「そうなっては困るな。だから、君の毒が奪われたとしても、俺がなんとかできるように俺も持ち歩く。そのためにも俺の分も準備してくれ」
「あ、え。と……」
 返事に困ってしまった。本来、毒は人を殺めたり陥れたりするときに使うもの。それなのに、ユージーンはクラリスを救うために毒を持ちたいと口にする。
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