わたくしが社交界を騒がす『毒女』です~旦那様、この結婚は離婚約だったはずですが?
 日が傾き始めると、パーティー会場を訪れている者たちも帰路につく。そして、外がとっぷりと暗闇に覆われたころには、残っていたのは魔獣討伐団に所属する者でも、ジャコブをはじめとするほんの一部だった。
 独身同盟のジャコブはなかなか帰ろうとしなかった。ユージーンがしびれを切らして「いいから帰れ」と押し問答している様子は、クラリスから見ても面白いやりとりであった。
「みんな、今日はありがとう」
 後片づけをしている使用人たちに声をかけると、彼らも「めっそうもございません。久しぶりに腕を振るえて楽しかったです」と言う。
 ユージーンと二人で、そうやって彼らをねぎらった。
 夕食を軽く終え、湯浴みをして、あとは眠るだけ。久しぶりにたくさんの人を目にしたクラリスは、やはり疲れていた。ウォルター領ののんびりとした生活に慣れてしまったのかもしれない。
 いつもより早めに寝台に潜り込もうか悩んでいたとき、ユージーンの寝室とつながる扉が開いた。
「……クラリス、眠ったのか?」
「いいえ。起きております」
 なぜかユージーンがそわそわしているように見えた。
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