わたくしが社交界を騒がす『毒女』です~旦那様、この結婚は離婚約だったはずですが?
「ネイサン様。申し訳ありません。私が目を離したばかりに、奥様の姿が……温室にいらっしゃらなくて……」
 ネイサンは眉根を寄せて、考え込む。
「裏の森の入り口付近に、蛇の巣穴を見つけたと奥様がおっしゃっていたので、もしかしたらそこかもしれません」
「わかりました。すぐに呼んできます」
 そのような場所に蛇の巣穴があっただなんてメイは知らなかった。知ったところで何をするわけでもないのだが。
 ネイサンに言われた通り、裏の森の入り口へ向かうと、そこにしゃがみ込んでいるクラリスの姿を見つけた。
「奥様」
「あら、メイ。どうかしたの?」
「旦那様がお戻りになられるとのことです。すぐに着替えてお出迎えを――」
 メイがそこまで言ったとき、どこからか男性の声が聞こえた。大きく声を張り上げ、何かを伝えているような声だ。
「あら。この声は、きっと旦那様の声ね。魔獣討伐団の団長とおっしゃっていたから、最後に団員の皆に声をかけているのね。だったら急いで戻らないと」
 クラリスが慌てて立ち上がったので、メイもその後ろをついていく。
「あ。メイ。いいところに」
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