わたくしが社交界を騒がす『毒女』です~旦那様、この結婚は離婚約だったはずですが?
「君が、クラリスがベネノ家から連れてきた侍女だな?」
「はい。メイ・ロビンと申します」
「今、彼らから聞いたのだが、君は毎朝、クラリスと散歩にいっているのだな?」
「はい」
「では、明日からその役を俺に譲るように」
 いいえ、とは言えない雰囲気である。
「承知しました」
「ところでメイ。クラリスは何が好きなんだ?」
 唐突にそのようなことを聞かれた。この質問の意図をかみ砕くと、ユージーンはクラリスに何か贈り物をしたい。だから好きなものを聞いている。そう、理解した。
 しかし、本当のことを言ってもいいのだろうか。
 メイはこの場にいる三人の顔をぐるりと見回した。彼らはクラリスの状況を知っている信頼のおける者たち。
 すっと息を吸い込む。
「奥様の好きなもの……毒、ですね」
「ん?」
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