わたくしが社交界を騒がす『毒女』です~旦那様、この結婚は離婚約だったはずですが?
「奥様……クラリス様が好きなものは毒です」
 それ以外、思い浮かばない。
 何よりも、毒のある植物を見つけてはじっくりと眺めているし、毒をもつ生き物を見かけてはうっとりとしている。
「……なるほど。彼女は毒師らしいからな……」
 まさかこの答えをすんなり受け入れるとは思っていなかった。しかし、クラリスが毒を好きなのは紛れもない事実。他の三人だってメイの答えに納得したような表情を浮かべている。
「旦那様は、奥様……クラリス様のことを好いていらっしゃるのですか?」
 失礼だとは思いながらも、メイはなぜかそう尋ねていた。
「そうだな。会ったのは先ほどが初めてだが、好ましいとは思っている。それが何か?」
 なぜかその言葉にメイは安堵した。
「いえ。クラリス様のことを末永くお願いいたします。クラリス様は私の恩人のような方なのです。クラリス様が幸せになるのが、私の幸せでもあります」
 メイの訴えに、ユージーンは深く頷いたのだった。
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