わたくしが社交界を騒がす『毒女』です~旦那様、この結婚は離婚約だったはずですが?
第六章:弟 x 毒女 x 夫
「結婚式は王都で挙げよう」
 いきなりユージーンがそのようなことを口にしたのは、彼と出会って十日目の夜だった。
「結婚式ですか? 今さら?」
 寝る前になると、ユージーンは必ずクラリスの部屋を訪れる。そこでお茶を飲みながら、他愛のない話をして、おやすみの口づけをしてから彼が部屋に戻る。
 というのが、二人の日課になっていた。
「今さらと言われても、俺が戻ってきたのが十日前だからな。ベネノ侯爵と相談したが、やはり王都のほうがいいだろうと結論づけた」
「いつの間に?」
 それがクラリスの本音でもあり、心の中で呟いたつもりだったのに声に出ていたようだ。
「ジョゼフが手紙のやりとりをしていた。そして俺も戻ってきてからすぐに挨拶と結婚式の話を書いて手紙を送った。返事がきたのは今日だ」
「左様ですか。ですが、なぜ王都で? こちらのほうがよいのではありませんか?」
 クラリスはウォルター伯爵家に嫁いだのだ。結婚式は嫁ぎ先で行うのが、慣例であると思っていたのだが。
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