わたくしが社交界を騒がす『毒女』です~旦那様、この結婚は離婚約だったはずですが?
「せっかくだから、君も家族にはウェディングドレス姿を見せたいだろう? むしろ、デリックが見たいと騒いでいるようだ」
 ありがたいことにデリックはクラリスを慕っている。いつも「姉様、姉様」と後ろをくっついてきた。そんな彼だからこそ、クラリスと同じように毒師の道を選んだのかもしれない。父親は、自分と同じ騎士にさせたかったようだが。
「そうですね。ウェディングドレス……二度も着るものではありませんからね」
 とはいえ、二年後にユージーンと離婚したとしても、もう二度と純白のドレスを着るつもりはない。毒師として王族にその身を捧げる覚悟。
「ですが、旦那様はよろしいのですか? こちらで式を挙げなくても……」
「ああ。俺はどこで式を挙げようがかまわない。君がたくさんの人から祝福を受けるような、そんな場所であるなら。それに、こちらでは、君が妻であると紹介したしな。結婚式のお披露目が必要であれば、また改めてパーティーを開くから心配するな」
「いえ。わたくしのお披露目は不要です。先日、みなさまにご挨拶したばかりではありませんか」
 魔獣討伐団の慰労バーティーで、ユージーンは結婚を発表し、クラリスが妻であると大々的に紹介したのだ。これ以上のお披露目などやられたら、見世物になってしまう。
「そうか? 民は皆、祝い事があれば喜ぶぞ? あいつらを喜ばせてやりたくないのか?」
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