わたくしが社交界を騒がす『毒女』です~旦那様、この結婚は離婚約だったはずですが?
「そうか。だったら、アルバートに感謝せねばならないな。アルバートの側にいたから結婚しなかったのだろう? それなのにこうやって俺たちは出会ったわけだ」
「旦那様を紹介してくださったのはハリエッタ様ですが? わたくしにぴったりの相手がいるとおっしゃっていました」
「さすがジェスト公爵令嬢だな。ぴったりだろ? 俺たちの関係は」
「えぇ。旦那様が離婚前提の結婚を提案してくださったときは、天才かと思ったのです。本当にわたくしのことをわかっていらっしゃる相手だと思って、ハリエッタ様に感謝したくらいですが……」
 そこでクラリスは口ごもる。
「どうした?」
 ユージーンは心配そうにクラリスの顔をのぞき込んできた。
「俺は君のぴったりの相手ではなかったのか?」
「えぇ。わたくしの思い違いだったようです。まさか、結婚して二か月経ってから、最初の約束をなかったことにするだなんて……。約束の守れないような男性は軽蔑いたします」
「それは悪いと思っている。君が噂どおりの毒女だったら、俺だって離婚約のままでいようとしただろう。だが君は、噂とは異なる魅力的な女性だった。それだけのことだ」
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