わたくしが社交界を騒がす『毒女』です~旦那様、この結婚は離婚約だったはずですが?
 王都へ行くことが決まったのは、そこから二十日後。ユージーンが戻ってきてから一か月後である。
 ユージーンとサジェスがベネノ侯爵と結婚式の相談をこまめにやりとりしていたようで、クラリスの知らぬところで日程が決まっていた。
 ウォルター辺境伯領から王都までは馬車で五日。往復したら十日かかる。今回、王都には十日ほどの滞在予定だ。ユージーンは二十日も城を空けなければならない。そうなれば魔獣討伐団だって団長不在の期間ができる。
 クラリスはその点をユージーンに指摘したのだが、何も心配はいらないと返ってきた。
 ユージーンが不在の間、城館や領地のことはサジェスが管理する。魔獣討伐団は副団長のジャコブがとりまとめるが、王国騎士団から騎士も幾人か派遣されるとのこと。
 どうやらこの辺はアルバートの差し金のようだ。クラリスとユージーンの結婚を祝いたいのは、彼も同じなのだろう。
 そしてクラリスは、約三ヶ月ぶりに両親と再会した。
「ご無沙汰しております。お父様、お母様」
 久しぶりに会った両親は、以前となんらかわりない。
「姉様~」
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