わたくしが社交界を騒がす『毒女』です~旦那様、この結婚は離婚約だったはずですが?
「やはり、俺の妻は恥ずかしがり屋なのだな」
「どうぞご自由に、なんとでもおっしゃってくださいな。ですが、ここにいる間、不用意にわたくしの部屋には入らないでください」
「つまり、君のほうから俺に会いに来てくれると? 寝る前に二人でお茶を飲む決まりだろう?」
「そのような決まりができたという記憶はございません。いつも、旦那様がわたくしの部屋に来るから、それでお茶を淹れているだけです」
「実家に戻ったからか、俺の妻はなかなか手強くなったな」
 仕方ないとでも言うかのように、ユージーンは肩をすくめる。
「ネイサンには隣の控えの間を使っていただきます」
「できれば君に控えていてもらいたいが」
「ご冗談がお上手ですこと。では、夕食の時間にお会いしましょう」
 ピシャリと言葉を放ったクラリスは、客室を出て、懐かしい自室へと向かう。
「クラリス様。お茶の用意ができております」
 そこには荷物の片づけをしているメイの姿があった。
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