わたくしが社交界を騒がす『毒女』です~旦那様、この結婚は離婚約だったはずですが?
「おかわりはいかがですか?」
 空になったユージーンのカップを見て声をかけたものの、彼は首を横に振る。
「クラリス……せっかく結婚式を挙げたんだ。今日は、初夜といこうじゃないか」
「え?」
「俺たちは夫婦だ。何も問題はないだろう?」
「あります。わたくしたちは離婚前提の結婚ですから、二年の間に子を授かってはなりません」
「つまり。君が子を授かれば、俺たちは離婚できない。そして俺は君と離婚したくない。それが、どういう意味かわかっているのか?」
 ニタリと笑ったユージーンが、獲物を狙う肉食獣のような目つきをしている。
「無理矢理にでもわたくしを抱くと、そうおっしゃるのですか?」
 クラリスは自身をきつく抱きしめた。
「君が素直にならないのなら、そういうのもありだな」
 侮蔑の色を紫紺の瞳に滲ませ、クラリスは彼を睨みつける。
「わたくし、旦那様を見損ないました」
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