わたくしが社交界を騒がす『毒女』です~旦那様、この結婚は離婚約だったはずですが?
 だが父王の周囲を考えると、ベネノ侯爵の言うことも間違いではないだろう。両親にもそういった場合に供えて毒見役はついているし、アルバートが幼いときにはその毒見役がアルバートの分も担っていた。
 しかし、アルバートだっていつまでも両親と行動を共にするわけではない。
 アルバートはベネノ侯爵の提案を受け入れ、専属の毒見役を側におくことを決めた。
 そしてやってきたのがクラリスなのだ。クラリスはベネノ侯爵の娘。侯爵夫人は国王夫妻の毒見役を務めているが、表向きは薬師として王城にいる。その娘であるから、毒見役として適しているのだろうと思うものの、何よりも彼女はアルバートよりも五歳も年下だった。
 このような子どもに、毒見役が務まるのだろうか。
 そんな不安をベネノ侯爵にぶつけると意外な答えが返ってきた。
 さらに、むしろ子どもだからこそ、相手に警戒心を抱かせなくて済むと。
 クラリスは年齢のわりには、大人びている子だった。
 それからクラリスはアルバートが参加する食事会や茶会などに同行することになる。彼女は遠くから食べ物とその周辺の者を観察して、毒の有無が判別できるという特技を持っていた。さらに、人の顔を覚えるのが得意で、一度アルバートに対して不埒な想いをぶつけた者をすべて記憶している。
 だからアルバートも彼女を信頼し、何年も近くにおいたのだ。
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